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棲家に行く度に寄る里山ガーデンで、一攫千金と男のロマンが交差した金山発掘跡地の話を聞き、大いに興味が湧いた。
去年地紙伊豆新聞にこの跡地の話題が掲載され、地元の方とガーデンのお客さんが昨日その場所を探しに行き、跡地を発見したと言う。
是非私も見に行きたいと話していたところに、時々お店でご一緒するそのお客様が偶然立ち寄った。これ幸いと、その場所に案内してもらえないかと懇願してところ快く引きうけていただき、一緒に行った地元の方に連絡を取ってくれ、その方まで同行してくれることになった。
これはきっとかみさんも行きたいはずだと思い、電話をして迎えに行って戻ってきたところで、総勢6名の金山発掘跡地探検隊が結成された。
3台の車は天皇皇后両陛下が行幸されたことのある貴重な稲作地「池」に聳える通称ゲンコツ山を登って行った。
6月には山中のワサビ田に源氏蛍が舞うゲンコツ山は、関係者以外は立ち入りを制限しており、手つかずの自然が残っている。
車を降りて案内人に導かれ、道なき道を登って行った。途中誰が付けたか目印の赤いテープが処所枝に張ってあった。それほど山深い獣道を登ること30分。遠くにそれらしき物が見えた時には、久しぶりに興奮を覚えた。
ドラム缶を大きくしたようなタンクや動力機に残土を運び出すトロッコレールなどが、放置されたままになっていた。
またサントリーウイスキーの小瓶やラベルの剥がれた一升瓶に、錆びついたホーローのカップなど、おそらく山中に寝泊まりして生活しいたであろうその時代を彷彿とさせる品までが、散乱していた。
掘削準備が整った日は、皆で乾杯しながら夢を語りあったに違いない。想像力が膨らむ。
開始されたのは、おおよそ60年前の昭和30年。ただ掘り始めてすぐに作業員が誤って塩酸を浴び大火傷を負ってしまい、そのアクシデントが元で発掘を断念したと、伝えられている。
松尾芭蕉の「夏草や兵どもが夢のあと」。なぜか、この句が頭に浮かぶ。
下山してガーデンに戻ったら、伊豆は温泉の源泉が湧く傍に金の鉱脈があり、金山や銀山が点在すると聞かされた。何処の誰が首謀したかは定かではないようだが、どうやら一攫千金を狙う根拠はあったようだ。
それしても穴場と言っては失礼だが、伊豆高原の山奥にこんな場所が現存するとは、想像だにしなかった。ある意味諸外国で有名な世界遺産を見学した時よりも、感激したかもしれない。
極々限られた人しか目にしていない、男の持つ見果てぬ夢と野望の跡だから。
明日自宅に戻る。