上信鉄道の終点は、葱で有名な下仁田
夢の箱999号は、定刻通りその下仁田駅を目指し車輪が動き出した。
私は、目的の上州富岡駅で下車するが
途中無人駅や木造の駅舎、紅葉の上州路が車窓を流れ、ローカル線の雰囲気を盛り上げてくれる。
この時ばかりは、999号に乗車していることを忘れてしまった。
駅に着くと、友人の一人が迎えに来てくれており、かみさんや友人と工場の入り口で巡り合えた。
明治5年に建設された、日本最初の官営工場だ。
日本の近代化を推し進めた産業遺産として、重要文化財に指定されている。
建築にはフランスから指導者を招き、レンガと木を組み合わせた木骨作りで建てられている。
タイミングよくNHK司馬遼太郎原作坂の上の雲のドラマが始まる。
明治は遠くなりにけりではあるが、新時代を築く若者の息吹と眼の輝きは
おそらく、ここで働いた女工さんにもあったはず。
物に溢れ便利な現代に生きることより
もしかしたら、明治を生きた若者の方が幸せだったかも知れない。
この製糸場もそうだが、少なくとも無から有を生じただけでも。