霧に包まれ見えずじまいの滝を後に、祭りの開かれる二荒山神社東照宮を目指す。

念のため、乗り込んだバスの運転手さんに、祭の開催の有無を聞いてみた。

今日は中止ですのアッサリとした返事に、逸る気持ちが一辺に沈んでしまった。

でも気を取り直して、東照宮の山道入口で下車する。

後に己の才能に見切りをつけたが
写真専門学校の生徒時代に、千人行列を撮影に来て以来の山門を潜ると、今では世界遺産の荘厳な社殿が迫ってきた。

境内では、みざる、いわざる、きかざるの三猿や眠り猫の彫刻に、まるでお約束かのような人だかりが出来ていた。

ボランティアガイドさんが熱心に案内する姿も見受けられ、これが世界遺産の威光なのか。

でもそのお陰で、眠り猫の由来やまうらに彫られた雀の彫刻の意味を知った。

眠り猫の門を潜り、石段を昇った先に徳川家康公の宝塔が建立されてある。

江戸時代は、将軍だけがその宝塔を参拝出来た。後は鼠ぐらいしか門を通らないため、鼠を捕る猫の彫刻を施したが、世の中の安泰を祈念して敢えて猫を眠らせたそうだ。

それで雀も安心して、境内を自由に飛び回る事が出来た証と、教えてくれた。

そう言えば、我が家の猫が雀をくわえて帰ってきたことがあった。

めでたし、めでたし。

写真撮影禁止の鳴き龍の音と仕組みを聞き、往時の日本建築の素晴らしさに感心したことも、書き加えたい。

残念ながら、祭の宵をカメラに残せなかったが、それでも満足出来る、日光への旅だった。

辛い事は、目の前で解決したほうが良いが、楽しみは先に伸ばしても夢として膨らむ。

どれだけ幻想的な祭りの宵なのか。